安倍総理も苦しめた潰瘍性大腸炎ってどんな病気

歴代長期政権と言われた安倍総理を辞任に追い込んだとされるのが、総理が中学生の時から患っていたという潰瘍性大腸炎です。

第一次安倍内閣発足後、’07年に突然の総理辞任を表明した当時、1日に30回もお手洗いに行き、夜中は眠れなかったというのですから、どれだけの苦痛を強いられていたか計り知れません。

慢性的な腹痛や下痢、発熱、血便、体重減少が続くと思ったら潰瘍性大腸炎だったというケースもあります。
国の指定難病である潰瘍性大腸炎は、クローン病とどう違うのでしょうか。

対処法や食事療法はあるのでしょうか。

潰瘍性大腸炎とクローン病の違いは何?

潰瘍性大腸炎とクローン病は、腸に炎症が起きる『炎症性腸疾患』です。
令和元年現在潰瘍性大腸炎の患者は日本国内で約22万人、クローン病は7万人(厚生労働省調)と言われ今後も増加する見込みです。

発病年齢は20~40代に多く、稀に50代から発病する患者さんも居ます。


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炎症が主に起きる場所の違いで見分けられています。

  • 潰瘍性大腸炎:炎症が起きる場所が主に大腸
  • クローン病:小腸や大腸など腸粘膜に炎症を引き起こす。

どちらも国の指定難病とされており、クローン病は免疫システムが正常に機能せず起こる上、潰瘍性大腸炎と違い正常は部分を間に挟んで、腸管数か所に渡って炎症が起きます。

原因は不明ですが、適切な寛解導入療法と生活の維持が再発防止に繋がっています。

潰瘍性大腸炎の症状と経過

潰瘍性大腸炎は、炎症の広がる範囲によって3つのタイプに分類されます。

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炎症の広がりは直腸に始まり、大腸の上に広がるので、炎症の幅の小さいもの順に、
直腸炎型、左側大腸炎型、そして大腸全てい炎症が広がる全大腸炎型に分類されます。

潰瘍性大腸炎は、炎症が起きて症状が強く現れる活動期と、症状が治まっている寛解期があります。
治療を続け寛解期を出来るだけ長く維持する事が望まれますが、生活に過度のストレスがかかると、活動期に入り、生活を維持するのも難しくなります。

潰瘍性大腸炎の検査は?

潰瘍性大腸炎の検査は、以下の通りになります。

  • 問診(下痢の回数、便の症状、腹痛の頻度、発熱など)
  • 便潜血検査(血便が出ていないかどうか)
  • 血液検査(炎症反応、貧血、栄養状態を見る)
  • 大腸内視鏡検査(大腸の炎症の範囲や進行度を見る、重度の場合だと腸壁が癒着している事も)

その他にも腹部のガス滞留を調べる為に、腹部X線検査をする事があります。

潰瘍性大腸炎の薬は?

潰瘍性大腸炎の治療は特効薬はなく、患者さん病状の活動期を速やかにおさめ安定した状態(寛解(かんかい)期)を長く維持する事が求められます。

潰瘍性大腸炎の薬として認定されているのはあくまで『大腸の炎症をすみやかに抑える』目的のもので、病状により治療の位置づけが変わります。
手術は『最後の手段』となるのは図をみて頂けると明らかです。


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潰瘍性大腸炎の薬は症状が軽度のものから並べると以下の通りです。

  1. 5-アミノサリチル酸(5-ASA)経口剤
    (メサラジン経口剤、サラゾスルファピリジン経口剤)
  2. 局所製剤(坐剤、注腸剤:メサラジン注腸剤、サラゾスルファピリジン坐剤)
  3. ステロイド局所製剤(坐剤、注腸剤、注腸フォーム剤:プレドニゾロン注腸剤、ベタメタゾン注腸剤、ブデソニド注腸フォーム剤)

基礎製剤の1と症状が重くなった場合のみステロイドを使用する組み合わせで活動期を乗り切る療法が取られる事もあります。

ステロイドも効果がない場合の療法は?

基礎製剤やステロイドも効果がない場合や免疫抑制剤や抗体製剤など、体の中の免疫に働きかけたり、炎症の原因となるタンパク質を抑え込む生体物質点滴を行います。
療法の強度が低いものから並べると以下の通りになります。


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  1. 免疫調節薬(免疫の異常反応を抑える薬:アザチオプリン、メルカプトプリン)
  2. 血球成分除去療法(顆粒球・単球を除去するアダカラム®(GMA)を使い、血液を腕の静脈から体外循環させ病原となる血球成分を除去する)
  3. 抗体製剤(炎症を引き起こすタンパク質を抑える薬:抗TNF-α抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体製剤)
  4. 免疫抑制剤(タクロリムス、シクロスポリン)
  5. サイトカイン抑制剤(ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤)

サイトカイン抑制剤投与になると、免疫機能まで抑え込むので、この薬も効果がないと手術が必要になります。

では潰瘍性大腸炎の寛解期を長く保ち、腸粘膜を回復させるには、どの様な心掛けが必要なのでしょうか。

薬の服用と規則正しい生活が寛解期長期維持の秘訣

潰瘍性大腸炎の回復には、寛解期のお薬の服用、規則正しい生活を心がける事が何より大事です。


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潰瘍性大腸炎の患者さんがお薬を規則正しく服用していた場合と、服薬を忘れた場合の寛解期の維持の長さを海外医療機関のデータを基に作成した所、お薬を服用していた人の方が寛解を維持しているのが判ります。

服薬を守れなかった患者さん約4割のうち6割の患者さんに再発が見られた事が報告されている上、服薬を守れなかった内訳は以下の通りです。

飲み忘れ(50%)
錠数が多い(30%)
薬の必要性を感じない(20%)

飲み忘れはともかく、薬の必要性を感じないというのは論外です。

国の指定難病の中には一日三回必ず服薬しなければいけない病も沢山あります。
副作用ともきちんと向き合い、規則正しい生活を心がけるようにしましょう。

 

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