冬の突然死・脳梗塞の前兆・一過性脳虚血発作(TIA)とは
一過性脳虚血発作(以下TIA)という病名に耳慣れなくても脳梗塞の前兆と言えばなるほどと思うはずです。
以前は24時間以内に症状が消えることから軽視されていたTIAでしたがMRI拡散強調画像(DWI)の進化により脳梗塞の前兆と言われるようになりました。
一過性脳虚血発作は何故脳梗塞の前兆と言われるのでしょうか。
こちらのページでは一過性脳虚血発作(TIA)の症状、治療法について解説させて頂きます。
一過性脳虚血発作は脳の血流が一時的に滞ること
一過性脳虚血発作(TIA)は脳の血流が血栓などが原因で一時的に滞ることによって起こる発作です。主に以下の症状が現れます。
- 一時的に手足が麻痺する
- 貧乏ゆすりをしていないのにガクガクと足が震える
- 視界が歪む、突然曇る
- 片方の目だけ突然見えなくなる(一過性黒内障)
- 突然ろれつが回らなくなる
- 倒れてしまう
- これらの症状が数時間~1日弱で収まる
症状が早い場合ですと数分、長くて1日弱で何事もなかったかのように収まってしまうのです。以前は24時間以内に症状が消えるというのがTIAの定義でしたが、数分で症状が消えてもTIAと言われるようになりました。
血管迷走神経反射の様に自律神経が関わるものではなく、脳の血流、一時的に脳に血流が流れなくなり、神経脱落症状が現れる発作をいいます。
TIAの脳梗塞のリスクは3割と言われる理由
TIA発症後から脳梗塞を発症するリスクは3割と言われています。
その理由はTIA発症後殆どの患者は数分から数十分で意識が回復するのに対し、1時間以内に脳の血流が再開しなければ、血栓が血管に詰まっている危険性があるので脳梗塞のリスクが考えられるのです。
TIAを発症した患者さんの中で半数は48時間以内は脳梗塞のリスクがあるので安静が必要です。
症状が数分で収まったからといって激しい運動をしたり仕事にいくのは厳禁です。
一過性黒内障の場合は脳神経外科へ
TIAが原因で起こる一過性黒内障(片目が突然見えなくなる)場合は眼科ではなく眼科と脳神経外科のある総合病院の救急外来を受診しましょう。
一過性黒内障は、血栓が頸動脈から眼の動脈に流れていくことにより起こる「網膜の虚血症状」(網膜の血流が不足すること)を言います。もしこのような症状が起こったら、神経内科や脳外科を受診しましょう。
眼の病気だと思って眼科に行くと、総合病院の紹介状を持って後日受診しなおさないといけないので二度手間です。後日総合病院を受診した時には肝心の症状が消えていることも往々にしてあるのがTIAです。
TIAの治療法は?
TIAは起こった原因により治療法が違います。
血栓が原因で起こりますが、血栓が出来る原因もストレスなのか生活習慣病か、動脈硬化かによって投薬するか食生活を変えるかが変わるのです。
動脈硬化が原因の場合はバイアスピリン®、プラビックス®、プレタール®などの抗血小板薬を処方します。
心房細動や心臓弁膜症など、主に心臓疾患が原因の場合は、プラザキサ®、イグザレルト®、エリキュース®、リクシアナ®などの新しいタイプの抗凝固薬を処方します。
これらの新薬は昔の薬にくらべて薬価が高いのが難点です。
’15年以降TIAは急性期の脳梗塞を包括して『急性脳血管症候群(Acute Cerebrovascular Syndrome=ACVS)』として両者を一連の病態として捉えようという世界的な動きになっています。
投薬や外科手術だけに治療を頼らず、ストレスをためない生活習慣改善からTIAに向き合う努力が医療現場でも改善策のひとつとして挙げられるようになっているのです。
TIA自体は早くて数分、遅くても数時間以内に意識が回復しますが、軽視してはいけません。
原因となる脳の血管を詰まらせる要因そのものがなくなるのではないのです。