ワクチン開発・流通1年を支えたEUA(緊急使用許可)って何?
ワクチン開発は通常は安全性を考えて10年以上かけて開発するものです。
新型コロナに関しては、1年以内にワクチンが開発されるという異例の承認スピードでした。
日本ではなしえないこの早さの背景にあったのは米国特例の
EUA(Emergency Use Authorization=緊急使用許可)という制度です。
薬事法もすっとばして、異例の承認スピードでワクチンを流通させた米国の
背景にあったものは何でしょうか。
ワクチン開発に1兆円の国家予算を立てる国
米国はワクチン開発に1兆円の国家予算が’20年早期に投入されていました。
日本では一度目の緊急事態宣言が出される前、ダイヤモンド・プリンセス事件を対岸の火事とみていた時既にワクチン開発予算を投入していたのです。
米国がワクチン開発・承認を1年で済ませた理由
米国・EU各国がワクチン開発・承認を1年で済ませる事が出来たのには理由があります。
米国は2001年の同時多発テロの後、ワシントン近辺で起きた炭疽菌バイオテロ事件です。
EU各国では’10年に起きたインフルエンザ大流行がきっかけとなりました。
日本に比べ人の行き来が激しく、移民の数も多いこれらの国では
通常の薬事承認ではなく、緊急対策承認制度EUAを設けています。
EUAはどんな仕組み?
EUAは米食品医薬品局(FDA)が緊急時に未承認薬などの使用を許可したり、
既承認薬の適応を拡大したりする制度にあたります。
何でもいいので申請できるのではなく以下の条件が当てはまります。
- 生命を脅かす疾患である事
- 申請する医薬品に対して、一定の有効性が認められている事
- 服用した際、潜在的リスク(副作用)を上回ると判断できる事
- 申請する医学品以外に、適切な代替品がない事
緊急承認なので日本人の感覚では『数が少ないだろう』と思うかもしれません。
2020年5月12日時点で、新型コロナに関する治療薬や医療機器、
体外診断薬を合わせて110以上の製品にEUAを発行しているのです。
EUAの許可が下りた新型コロナワクチンは?
EUAの緊急使用許可は、変異株が増えた事で’21年6月以降が厳格化すると発表されています。
’21年6月現在EUA許可の新型コロナワクチンは、ファイザー(自治体・個別接種)、モデルナ(大規模接種会場)、ジョンソン&ジョンソンのみです。
日本でも血栓の副作用が懸念されるアストラゼネカと、ノババックスは保留状態となっています。
申請許可制度と予算に阻まれる日本の製薬会社
日本はワクチン開発に消極的で、うがい手洗い消毒の公共衛生面に力をいれる傾向にありました。
その上、米国の様な申請許可制度がなく優秀な人材が海外に逃げてしまうという痛い思いもしています。
今回の新型コロナウィルスを境に日本のワクチン開発土壌も変わればよいのではないでしょうか。