4万人に1人?アルポート症候群って何
遺伝子性指定難病のひとつに、アルポート症候群があります。
慢性腎炎の親から生まれた子供が、腎不全だけでなく難聴、網膜剥離など眼病を患う病です。
具体的な治療方法は見つかっておらず、患者数が少ない上、治験費用も打ち切られている指定難病とは、どのようなものでしょうか。
アルポート症候群はコラーゲンの欠損により起こる病
アルポート症候群は、体の中のIV型コラーゲンの遺伝子に欠損が生じることにより起こる病です。
Ⅳ型コラーゲンは、体内で以下の働きをします。
- 腎臓の中で糸球体(血液中の水分をろ過する組織)を作る
- 毛細血管、内耳、角膜を作る
健康な人は、1つの腎臓あたり100万個のⅣ型コラーゲンが使われていると言われています。
ですがアルポート症候群の人は、正常なⅣ型コラーゲンが作れないので、血液中のタンパクや赤血球が尿に漏れ、血尿やタンパク尿が幼少期から見られます。
その結果30~40代で末期腎不全に陥るだけでなく、難聴、白内障、網膜病変が起こるのです。
アルポート症候群は、3種類に分類される
アルポート症候群は、遺伝形式に応じて以下の3種類に分類されます。横のパーセンテージは発生比率です。
染色体の関係上、8割が男性患者を占めます。
- X染色体連鎖型(X染色体性:80%)
- 常染色体潜在(劣性)型:15%)
- 常染色体顕性(優性)型:5%)
アルポート症候群は、慢性腎炎を持つ親から子への遺伝疾患と言われていますが、患者の2割は、遺伝子の突然変異によって起こると言われています。
X染色体性のアルポート症候群では、男性のほうが腎不全への進行が速く、10~40歳代に末期腎不全に至り、難聴も問題となります。
一方の女性では症状が軽く、進行が遅いのですが、腎不全になります。
日本には1200人以上の患者がいる指定難病
アルポート症候群は、世界的に見て発生頻度は約5万出生に1人、日本に1200人以上の患者がいる指定難病です。
しかしながら根本的治療はなく、タンパク尿を減らし腎障害を遅らせる対処療法のみとなってます。
主に以下の内服薬が処方されています。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(リシノプリル、エナラプリルなど)
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ロサルタン、カンデサルタンなど)
アルポート症候群の名前の由来は、1927年に南アフリカ人医師のセシル・アルポートが、家族に慢性腎炎がある英国人大家族で、男性患者が女性患者よりも重症である研究結果から、つけられた難病です。
現在は出生前診断でも知ることが出来ますが、発券から100年近くたつ現在。
特効薬がまだまだ見つからない指定難病があるのは辛いことです。